境界線から愛を込めて

君が冷静と情熱のあいだで浮かんだり沈んだり死んだり生き返ったりしている間、私もまた、卵を割ったり水を浴びたりしながら懸命に生活をしていた。 エモーショナルを食べて成長するモンスターだから食当たりもしょっちゅうなんだけど、喪失感がないとやって…

ごっこ遊びー後日譚

一人遊びが得意な子供だった。 おままごとの台本を自分で作り、台詞を考え、1人で何役も演じたりした。 自分以外の誰かの介入によって自分の物語が台無しにされるのが我慢ならなかったし、共有したいとか、理解されたいという欲求は殆どと言っていいほど感じ…

遊戯標本その1:絶望ごっこ

:::狂えない少女は狂ったふりをする 少年は、紅茶を淹れ続ける::: 「絶望ごっこ」が彼女のお気に入りの遊びだった。 彼女が考案したその遊びに、僕は一度も参加を許されなかった。何故なら僕には「遊び」に飽きた彼女に紅茶を淹れるという大切な役割が与えら…

遊戯標本その3:七夕ごっこ

:::運命の恋人と宇宙で待ち合わせ::: 近頃の異常な気温の上昇は、世界規模の人口増加が原因と考えられる。 定期的に行われるロリィタ娘とキグルミおばけの戦争によってこの星のキャパシティはなんとか保たれていたが、人々は極限状態の暑さの中で地獄の苦し…

遊戯標本その2:白百合ごっこ

:::花はその花弁をひらくとき、自分が最も美しいことを知っている:::私たちはみんな、本当は男の子のことが気になって仕方がなかったけれど、男の子なんて汚いから、女の子のことが好きなふりをしていた。アイちゃんの髪は絹のようにさらさらで、光に当たる…

かわいい戦争

かわいいは消費されてゆく。 消費され、飽きられ、忘れ去られ、新しいかわいいへと入れ替わっていく。 それを空虚だとか愚かだとかいう人たちもいるが、消費されないかわいいなんて、パッケージを開封しないままの商品と同じである。なんの価値もない。時代…

ニーチェも言ってたけど、やっぱり私は住む場所を間違えているのだと思う。京都の湿っぽい空気と閉鎖的な性格は、自己放出型の心神喪失現象を治療する人間にはちょうど良いだろうが、私の健全な明るさを澱ませ、不完全燃焼を起こし、身体に悪い瓦斯を生じさ…

離婚について

14歳年上の彼。同棲して5年。子供が3歳。 で、当時23歳の私は、約一年悩んだ末に、彼・・・内縁の夫と別れることを決意した。 決めてしまったあとはあっという間で、引っ越しから家具の処理、役所の手続き、調停の申し立て、などなどなどなど、何から何まで…

404 not found

どこもかしこもリンク切れである。 現存のウェブサイトも時が止まったかのように2009年頃を境に更新を停止している。さながら、火山灰に埋もれたポンペイの遺跡のよう。 あの頃のテキストサイト勢たちはみんなどこへ行ってしまったのか。そう、これはインタ…

ブログをはじめました

年齢を追うごとに自意識は調整されて、感受性だとか情緒だとかのメータは平均値化し、私たちの精神世界に安定と平和が訪れるものなのだと思っていた。つまり、大人になれば私たちはこの得体のしれない苦しみから解放されるのだと。 まさかいまだに、こんなふ…

シンデレラナイトフライト

http://bluekmar.com/ef/lyrics/derella.html水井が作って、わたしが歌いました。ここに書きたいことは3,000文字くらいあるんだけど簡単に言ってしまうとわたしはこのひとの常軌を逸した語感センスがおそろしく好きで十年。天才って言われればまず彼の飄々と…

自分に忠実であることは本当に孤独で逃げ場がない。私が祈らないのは、一切の責任転嫁をしないという決意に基づいて私が下した選択だ。そこには神への否定も肯定もない。私が信仰を持たないことについて、ある信仰者は、「自分ではどうしようもない状況に直…

第二夜

運命の恋人というのは、共に運命を全うする、という意味合いを示すものではない。そもそも運命は完全に独立した絶対意思であり、けして複数と融合したりすることはない。あらゆる分岐点を掻い潜っても必ず発生するルート、それが運命の恋人である。 私とあな…

第一夜

誰でも良かった。 手当たり次第隠れ蓑を求めて、どこへ逃げたって、すぐに戻らなくてはいけないこともわかっていた。 綺麗に飾られた白い鳥籠の中で、私の人生はゆっくりと収束してゆくのだと思っていた。 お姫様のようなベッドは花柄のシーツに覆われた鉄格…

ニーチェ「この人を見よ」再読

常識、ルール、キリスト教的道徳、ドイツ人的思想、イデアリズム…なぜニーチェがこのように否定を繰り返さねばならなかったのか、彼が生まれながらにしての革命家、ダイナマイトであったことは言うまでもないが、ニーチェという人が生きたこの時代における「…

宵はヨイヨイ明けてはこわい。 酔狂の過ぎるお時間です。 毎日桜並木の下を歩いているので下手に口をひらくと魂がでていってしまう。行燈に照らされた夜桜なんかはとくに危険だ。うっかり川の底に天国への入り口があるような気分になる。 さて今日からしがつ…

煙草と花

私を掻き集めている。私のようなもの、が深淵に落ちて消えてしまっても、私はまだここにあるのだと確信するために。私はこの両手で、私を抱きかかえることができる。言葉を使うことは、自分を拡散させることだ。どんなに明確な意志も、言葉となった瞬間それ…

「何かを失わないと何かを得られない」がこの世の真理のような顔で横行闊歩しているが、そのような貧乏臭さは、恵まれた人間の前では何の影響も発揮することができないばかりか、あっけなく打ち砕かれてしまうのである。 運命は私に必要なものを用意し、不要…

死にむかって生きる人間の発する死にたいはつまり生きたいである。生きたいを発する人間が死へと加速しているのと対応している。生によって得られなかったものを、対である死に求めることができると考えている。そして同時に、生によって棄てられなかったも…

死んでしまった昔の私を掘り起こして、今までごめんね、と言った。死んでいる私を、何度も何度も殺したりして、ごめんね。それはもうほとんど腐りかけていたけど、髪をきれいにととのえて、花をそなえてあげたら、すこしだけよくなった気がした。私はこれか…

たとえば私が死ぬことで絶望するひとがいるかもしれないのだから死んではいけないっていうのは理由にならない。私が生まれることで絶望したひとだっているかもしれないのに。 いや、そういうことではなくて。 でもだってやっぱり死ぬのはずるいと思うじゃん…

私の身に降りかかる凡ゆる事象は私自身ではない。私の存在に何ら影響を与えない。しかしそれらを排除し、抽出される純粋な私自身というものが本当に存在するのか。私を形作っているものは影響の集合体に過ぎない。魂の正体とは、精神を持たない熱そのもので…

見知らぬ路地を歩き回り漸く見つけた本屋は閉店休業で、薄汚れたシャッターが風に揺れているのだった。足元にオオイヌノフグリが咲いている。下校途中の小学生をお地蔵様がにこにこと見つめている。空は青いなあなどと呟いてしまいそうだ。何にでもセンチメ…

舞台は着々と用意されている。私は怖い。私は精算しなければならない。変わらなければならない。終わらせてあげなければならない。あの人を家へ帰らせてあげなければならない。私は怖い。本当に失ってしまったら、どうやって償えばいいんだろう。身勝手な私…

昨日、夢をみた。今はもう言葉にすることもできないくらい、曖昧なものになってしまった。 しあわせな夢の残像はあっという間に薄らいで、あちら側の世界に戻っていってしまう。 どれだけ手を伸ばしてみても、つかまえておくことができない。いつも。いつも…

幸福のかたちは数え切れないほどたくさんあって、手に入れることは案外容易い。自分に合ったそれを見つけることが、とても困難なだけで。あと数時間で、また無事にこの一年を葬ることができます。まだ、生きています。

子供の頃からお話を声に出して読むのは好きだったけど、読んでもらったことは全然なかったなあって、思い出した。お母さんはあんまり本を読むのが上手じゃなかったし、お母さんが喜んでくれるのがうれしかったから、いつも私のほうがお母さんに読んであげて…

どんどん鈍感になっていく。何にでも答えを求めちゃってバカみたい。ナビゲーション無しじゃ歩けないなんて地図もろくに読めないくせに何言ってるんだか、でも勢いよく間違えて勢いよく引き返す明るさが圧倒的に足りない。中途半端だからすぐに傷が付く。新…

ピンクのアリス柄やギンガムチェックの苺柄や生成りのショートケーキ柄のワンピースを、BABY,THE STARS SHINE BRIGHTの一番大きいショップバッグに入れて、透明のビニールテープでしっかり封じ込めた。この巨大なピンクの包を17歳の女の子に届ける。東京都某…

緒不安定でしんどい。外に出ようとするだけで頭がぐらぐら、変な汗が出て、吐気がする。なんなのやこれは。春は調子が悪いなあ。春になるといつも頭の中で再生される映像があって、ピンク色のころんとした形の靴をはいた私の足元に桜の花びらがひらひら落ち…