第二夜

運命の恋人というのは、共に運命を全うする、という意味合いを示すものではない。そもそも運命は完全に独立した絶対意思であり、けして複数と融合したりすることはない。あらゆる分岐点を掻い潜っても必ず発生するルート、それが運命の恋人である。

私とあなたは運命の恋人だった。
勿論今現在においても。
私の運命はあなたに出逢うことを選択し、そしてやがては、あなたと決別することを選択した。
それだけのこと。
たったそれだけのことだ。
 
かくして、リボンは真新しいナイフによって呆気なく切断された。
首元から無様に垂れ下がるそれを長い指がするりとほどいた。
君がまだ本当に飛ぶつもりでいるのなら、鳥籠を壊すのは今しかない。茫然と立ち尽くす私に向かって少年はそう言い放つと、もう手の中のナイフを、ダイナマイトに持ち替えていた。
その光景を目にするまで、私に鳥籠を壊すことが出来ないのはあなたへの愛故であると信じていたはずだった。ところがその時私の頭にあったのはあなたではなく、あなたが私に与えたもの、私とあなたの、小さな息子のことだけだった。そして驚くべきことに、私はそこではじめて、自分が女であることをはっきりとわかったような思いがしたのだ。