2014-03-01から1ヶ月間の記事一覧

煙草と花

私を掻き集めている。私のようなもの、が深淵に落ちて消えてしまっても、私はまだここにあるのだと確信するために。私はこの両手で、私を抱きかかえることができる。言葉を使うことは、自分を拡散させることだ。どんなに明確な意志も、言葉となった瞬間それ…

「何かを失わないと何かを得られない」がこの世の真理のような顔で横行闊歩しているが、そのような貧乏臭さは、恵まれた人間の前では何の影響も発揮することができないばかりか、あっけなく打ち砕かれてしまうのである。 運命は私に必要なものを用意し、不要…

死にむかって生きる人間の発する死にたいはつまり生きたいである。生きたいを発する人間が死へと加速しているのと対応している。生によって得られなかったものを、対である死に求めることができると考えている。そして同時に、生によって棄てられなかったも…

死んでしまった昔の私を掘り起こして、今までごめんね、と言った。死んでいる私を、何度も何度も殺したりして、ごめんね。それはもうほとんど腐りかけていたけど、髪をきれいにととのえて、花をそなえてあげたら、すこしだけよくなった気がした。私はこれか…

たとえば私が死ぬことで絶望するひとがいるかもしれないのだから死んではいけないっていうのは理由にならない。私が生まれることで絶望したひとだっているかもしれないのに。 いや、そういうことではなくて。 でもだってやっぱり死ぬのはずるいと思うじゃん…

私の身に降りかかる凡ゆる事象は私自身ではない。私の存在に何ら影響を与えない。しかしそれらを排除し、抽出される純粋な私自身というものが本当に存在するのか。私を形作っているものは影響の集合体に過ぎない。魂の正体とは、精神を持たない熱そのもので…

見知らぬ路地を歩き回り漸く見つけた本屋は閉店休業で、薄汚れたシャッターが風に揺れているのだった。足元にオオイヌノフグリが咲いている。下校途中の小学生をお地蔵様がにこにこと見つめている。空は青いなあなどと呟いてしまいそうだ。何にでもセンチメ…

舞台は着々と用意されている。私は怖い。私は精算しなければならない。変わらなければならない。終わらせてあげなければならない。あの人を家へ帰らせてあげなければならない。私は怖い。本当に失ってしまったら、どうやって償えばいいんだろう。身勝手な私…