第一夜

誰でも良かった。

手当たり次第隠れ蓑を求めて、どこへ逃げたって、すぐに戻らなくてはいけないこともわかっていた。
綺麗に飾られた白い鳥籠の中で、私の人生はゆっくりと収束してゆくのだと思っていた。
お姫様のようなベッドは花柄のシーツに覆われた鉄格子。
自分が消えてしまいそうになる不安と恐怖におそわれながら大好きな大好きなあなたの帰りを待ち、アルコール臭の充満する部屋で、ついには待ちわびたあなたの腕さえも見失って嗚咽を殺しながら眠る日々が、永遠に続くのだと、そう思っていた。
私を連れ出そうとしたり、新しい鳥籠を与えようとする人達は幾らか居たけれど、私はあなたを愛しすぎていたし、あなたの与えた鳥籠を捨てられるほど他のなに一つとして持ち得ていなかったのだ。
だから静かに耳を塞ぎ、ひとりで出かける時にはけして帰り道を忘れないように、自分の首にきつくリボンを結んだ。誰もこのリボンをほどくことはできない。そんな私をあなたは愛おしく思うことだろう。それが私の幸せであり、地獄だった。