ニーチェ「この人を見よ」再読

常識、ルール、キリスト教的道徳、ドイツ人的思想、イデアリズム…なぜニーチェがこのように否定を繰り返さねばならなかったのか、彼が生まれながらにしての革命家、ダイナマイトであったことは言うまでもないが、ニーチェという人が生きたこの時代における「善さ」は、あまりにも彼の性質に不適合なものであったのだと思う。彼の柔軟さ、自由を当然のように求める開放的な精神はむしろ現代に生きる我々のそれに近い。彼は彼が生きたよりずっと未来を生きていたのだ。後世においては狂気に飲まれた哲学者として知られているが、私は彼ほど健康で純粋な、少しも汚染されたところのない人間を知らないとさえ思う。