緒不安定でしんどい。外に出ようとするだけで頭がぐらぐら、変な汗が出て、吐気がする。なんなのやこれは。春は調子が悪いなあ。春になるといつも頭の中で再生される映像があって、ピンク色のころんとした形の靴をはいた私の足元に桜の花びらがひらひら落ちてきたのを、物凄くさみしい気持ちで見ているような見ていないような、とにかくぼうっと立っている。誰かに呼ばれた気がして振り返るんだけど、そこには誰もいない。そういう映像。場所は中野の新井薬師神社だと思う。いつかの記憶の断片なのか、ただのイメージなのか、それはわからない。とにかくいい気分ではない。

一番に会いたいと思っていたのは私だけなのかと思うとなんか泣きたくなった気がしたけど、別に悲しいことではないはずだった。だって会えるんだし?私ならそう言ったはずだ。よくわからなくなった。目下考えるべきことは山ほどある。元気になったら梅小路公園あたりにピクニックに行こう。頑張って仕事をして、お金を出来るだけたくさん稼ごう。ベランダに春の花を植えて、月が変わったらパーマをかけて、綺麗にして、夏は東京一人旅なのだ。楽しみなのだ。こうして想像していれば、少しだけ楽しい気持ちになれる。

頭の中にある様々なことを言葉にして書き出すことは、原因不明の不安感から私を守るシェルターになる、と先生は言った。本当かどうかなんて、私には考える余地もないことだった。