子供の頃からお話を声に出して読むのは好きだったけど、読んでもらったことは全然なかったなあって、思い出した。お母さんはあんまり本を読むのが上手じゃなかったし、お母さんが喜んでくれるのがうれしかったから、いつも私のほうがお母さんに読んであげていた。

誰かのことを考えるときわたしの頭には顔より先に声がうかぶ。
声っていうのはすごく大事だ。顔よりずっと素直に感情をあらわしたりすることも勿論だけどそれだけじゃなくて、その人の内側にあって外からは決して見ることができないようなものを、声はしっかり含んでいる。その人の声に耳を澄ませたときにどんな気分になるのかってことが、その人が自分にとってどんな人なのかってことだと思う。
優しい声で語られる哀しい物語はやっぱりとても優しかった。優しい声で物語を読んでもらうことがこんなに幸せなことだったなんて、知らなかったな。