どんどん鈍感になっていく。何にでも答えを求めちゃってバカみたい。ナビゲーション無しじゃ歩けないなんて地図もろくに読めないくせに何言ってるんだか、でも勢いよく間違えて勢いよく引き返す明るさが圧倒的に足りない。中途半端だからすぐに傷が付く。

新宿みたいな祇園みたいなところを歩いてた。夢の中で、私たちは時間に魔法をかけた。とても簡単なトリックを使って。誰にでも出来るようなやりかたで。でもそれは紛れもなく魔法だったんだ。いつまでも歩いていられた。歩いていられるような気がした。このことを私はずっと永遠に覚えていられるのだと思った。
意識が明け方の青白い光によって回収されて私の中に還ってくる頃にはもう色も音も熱量も端から順番に消えかかっていた。頭に残ったのは言葉だけ。文字に変換された言葉だけ。言葉は損なわれない。だから時間よりも早く言葉をつかう必要があるんだった、言葉にならないものは何もかもあてにならない。消えていく。私の世界から、出ていく。唇を噛んだ。痛い。鉄の味がした。そういえばこの間教えてもらった口内炎の薬は値段が高くて驚いた。今朝の幸せな夢のことをもう殆ど思い出せない。