YUUTSU

なにはともあれ、もう春なのさ。

桜は何をそんなに焦ってといわんばかりにもう葉桜に変わりはじめてしまった。

ひらひら舞う花びらのように軽やかに、穏やかにいたいのに、一年のうちで春がいちばん心をかき乱すのはなぜだろう。はりつめたピアノ線みたいにキリキリ軋みをあげているせいで、やわらかい風にさえもちりちり肌を焼く痛みを感じてしまう。

世界が優しくなればなるほど、世界とわたしの間の膜は完成されてゆき、うまく溶け込めずにいる異物のわたしをその他の何もかもが追い出そうとしているように思う。涙がぽとり。どうしたの?の声に答える術があるはずもなく。

 

切ない、便利な言葉ですね。